野球のスイング速度と投球速度の測定結果からみる成長の度合い

野球塾B.A.Gでは3カ月に一度、スイング速度と投球速度を測定しています。

今回、昨年の9月と12月と今月の3回の測定結果をもとに、選手の成長の度合いを見てみたいと思います。


まずはスイング速度の測定について説明します。

測定にはSSKのマルチスピードテスターを使用し、バットは学年・年齢を問わず、DeMARINI(ディマリニ) の少年硬式用バット(76cm/590g平均)を使用しました。

 

さて、測定の結果を見てみましょう。グラフは小学4年生から高校1年生までの全22人のデータになります。おおよそ右肩上がりのグラフになっているかと思います。スイング速度が下がった選手も何人かいるのですが、6か月前と比べると平均で5.6km/hスイング速度が上がりました。

全員例外なく上がっているかというと、そうではありませんでした。下がった選手の中には「毎日素振りをしていたのですが…」と言う選手もいました。しかし、よくよく聞いてみると、重いバットばかりを振っていたり、ダラダラと数をこなすだけになっていたりとスイング速度を下げる原因がありました。


次に投球速度の測定について説明します。

スイング速度の測定と同様に、測定にはSSKのマルチスピードテスターを使用し、約10m先のネットに向かって投球したボールを測定しました。

*ボールに関しては各学年・年齢で使用するボールが異なるため、普段使用するボールで測定しました。

 

測定の結果を見てみましょう。グラフは小学4年生から高校1年生までの全19人のデータになります。おおよそ右肩上がりのグラフになっているかと思います。スイング速度と同様に下がった選手も何人かいるのですが、6か月前と比べると平均で4.0km/h投球速度が上がりました。

スイング速度と同様に、投球速度も全員が例外なく上がったわけではありませんでした。R5.12とR6.3の間で次のステージへの準備のために軟式J球から軟式M球や硬式ボールに変わった選手が2人います。彼らはボールが変わると5km/hほど投球速度が落ちていました。


成長の度合いには当然個人差があります。

しかし、平均的に見てどのくらいスイング速度や投球速度が伸びていくのか、その基準となる数値を知っておくことは大切です。

今回の測定の結果においては、スイング速度であれば半年に5.6km/h、投球速度であれば半年に4.0km/hほど上がることが分かりました。

1か月で1km/h上がればスイングも投球も平均以上の成長の度合いだ、ということになりますが、1か月で1km/hは少ないのではないかと思いませんか?

単純計算してみましょう。1か月で1km/h、1年で12km/h、小学校4年生から始めて高校3年生までの9年間でそのまま成長を続けるならば108km/h上がることになります!?

小学校4年生で50km/h振れて投げれていれば...!?

 

指導者の方々や保護者様は成長の度合いを度外視して期待をしてしまうワナに陥ります。

コツコツ努力を積み重ねても数値としては1か月に1上がるかどうか、というのが実状です。

数値が出なくても、多少下がっても、決して悲観する問題ではありません。

成長の度合いを度外視して期待をかけ、叱責指導してしまうことが問題です…

 

 

数値という見える形でパフォーマンスを評価し、成長の度合いを知るということはモチベーションを高めることにも繋がります。

しかし、その数値だけに囚われてしまわないように注意することが大切です。

そして成長の度合いを知っておくことで不要な成長への心配を避け、異常なトレーニングをすることがないようにしましょう。

 

最後に、野球というスポーツは陸上のような記録を競うものではありません。

スイング速度が遅くてもヒットを打って活躍できます。

投球速度が遅くても三振も取れます。凡打の山を築くことができます。

もちろんスイング速度・投球速度が速いに越したことはないのですが、「必須ではない」ということを忘れてはならないでしょう。

ここに、野球というスポーツの面白さがあると私は思います。